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ウソと誤解とUX(ユーザー調査)

UX(ユーザー調査、インタビュー)の講義なんかを受けると、よく「ユーザーはウソをつく」というフレーズを聞きます。このフレーズにはおそらく色々な意味が含まれているとは思うんですが、個人的には「ウソと誤解をなくそう」という言葉に集約されるんじゃないかなと思います。

「ウソと誤解」に気づけていないと、ユーザー調査の質は下がります。逆を言えば、ユーザー側の「ウソ」とインタビュアー側の「誤解」をなくすことが、ユーザー調査の質をあげる効果的な方法です。

今回はそんな、特にインタビューにおけるウソと誤解に焦点をあてて記事を書きたいと思います。

ウソと誤解の種類

発信(ユーザー)側が事実とは違う情報を(意識的・無意識を問わず)発信してしまうことを「ウソ」、受け取り(インタビュアー)側が発信側が発信した情報を間違って解釈することを「誤解」と呼ぶことにします。

ユーザー側の「事実」がインタビュアー側の「解釈」でどう変わってしまったか、という観点で自分なりに分類分けしました。

虚偽

いわゆる「嘘」です。事実とは反対の情報がインタビュー側に伝わります。

インタビュアー(以後「イ」):「芸能人のスキャンダルは好きですか?」
ユーザー(以後「ユ」):(実際は好きだけど)「えーと...、好きじゃないです」

極端化・決めつけ

ユーザー側の複合した事実を片方に極端化してしまうパターンです。

イ:「晴れと雨どっちがすきですか?」
ユ:(実際特に大きな優劣はないけど)「んー、晴れですかねぇ」
イ:「絵画は好きですか?」
ユ:(実際特に好きってわけではないけど)「どちらかといえば好きですかねぇ」

勝手な補間

ユーザー側が伝えていない情報を、インタビュアー側が勝手に解釈して埋めてしまうパターンです。

イ:「ご職業は?」
ユ:「デザイナーです」
イ:「(デザイナーということは絵書くの好きそう、イラレとか使ってて...)」

部分的理解

ユーザーの情報を部分的にしか理解できていないパターンです。

イ:「何故この勉強会に来たのですか?」
ユ:「ええっと、サービスに興味があったからですかねぇ」(実際はその他に、ビールがタダで飲めるしリクルーティングもしたいし、ちょうどその日勉強会の近くに用があって都合が良かった等々)
イ:「何故このサービスを使い始めましたか?」
ユ:「なんでだろう、機能が充実してるところに惹かれたからかなあ」(実際はその他に、SNSでよく見るようになってなんか盛り上がってるぽくて、デザイン見る限りちゃんとしてそう、開発者がSNSやブログで言ってることに共感が出来て、土日にたまたま暇ができて触ってみようと思った等々)

不明確な事実

決定していない事実がインタビュアー側に決定事項のように伝わってしまうパターンです。

イ:「明日晴れだったら何をすると思いますか?」
ユ:「んー、サイクリングですかねえ」(実際次の日晴れると、ショッピングに行っていた)
イ:「スターバックスについてどう思いますか?」
ユ:「どう...?お洒落だなーって思います。」(実は、コーヒーをもらうまですごく待たされてイライラした経験があった)

ウソと誤解の要因

種類を挙げましたが、ウソと誤解が起こる要因は何なんでしょうか?

本音を言いたくない

自己防衛的に言いたくないケースですね。社会的にどう見られるかが気になる質問に答える状況や、インタビュアーへの信頼が足りないような状況で起こりえます。

例に挙げた「芸能人のスキャンダルは好きですか?」は、「ちょっとミーハーに思われるから好きだとは言いたくないなぁ」という気持ちから嘘をついてしまっています。

誘導

インタビュアーが質問をするときに、選択肢を狭めたり誘導してしまうケースです。

晴れと雨どっちがすきですか?」は二択に絞ってしまっていて、「絵画は好きですか?」といった聞き方は誘導になってしまいます。

思い込み

インタビュアーの価値観で勝手に判断してしまうケースです。

例に挙げた「(デザイナーということは絵書くの好きそう、イラレとか使ってて...)」のように、特に職業にまつわる価値観のズレは大きいように思います。

その思い込みから「じゃあ、絵書くのとか好きなんですか?」という誘導質問に発展するケースがよくあります。

※価値観に関連して、前にインタビュー練習会をやっていたときに、質問自体がインタビュアーの興味があるものばかりになってしまうというケースがありました。

ユーザーが自分を理解していない

ユーザー自身が自分のことを理解していないというケースはよくあります。こちらの記事には、人は自分自身のニーズを5%しか理解していないなんてことが言われています。

「何故この勉強会に来たのですか?」「何故このサービスを使い始めましたか?」なんて言われても、決めたときのことなんてもう覚えていないし、要因が複雑すぎて正確にその要因を分析することは不可能です。

仮に何か答えたとしても、「強いて言うなら」っていうことが多いです。

※インタビュー練習会でもそういう質問をされたことがあって、何か答えはするんですが、自分でもその回答に違和感がありました。

説明できない・どう答えればいいかわからない・情報が少ない

質問の仕方が悪いケースですね。

「明日晴れだったら何をすると思いますか?」は「明日」「晴れる」という情報だけでは何が起こるかはユーザーにも予測不可能です。

「スターバックスについてどう思いますか?」は漠然としすぎていて何を答えればいいかわかりません。

ウソと誤解をなくすために

要因がわかりました。では、ウソと誤解をなくすためにはどうすれば良いでしょうか? こちらは、人間と話す をだいぶ参考にしています。

ラポールを形成する

ラポールとはわかりやすく言い換えると「信頼」です。前に受講したインタビューのワークショップでは、45分のインタビュー時間のうち最初の15分はラポール形成のための個人的な話(雑談)をする時間にあてられていました。

いきなり聞きたいことを聞くのではなく、先に話しやすい状態をつくってからインタビューを始めることが重要です。

「芸能人のスキャンダルは好きですか?」という質問も「この人なら本音を言っても大丈夫かも」と思わせることが出来れば、本音を言ってくれるかもしれません。

観察をする

リクルートのUXデザイナーの方がおっしゃっていたように、言葉以外の情報にも注意深く観察します。

人間は言葉だけでコミュニケーションをしているわけではありません。言葉以外の部分でわかることはかなりあります。

実は「ウソと誤解の種類」で挙げた例も、結構ニュアンスを含ませた回答にしていることがわかるかと思います。

  • 「えーと...、嫌いです」
  • 「んー、晴れですかねぇ」

こういうところから「あぁ、嘘をついてるっぽい」とか「そんなに大差ないんじゃ」と推測することが出来ます。なので、ニュアンスも含めて記録をする必要があり、そのためには録音/録画するのが手っ取り早いです。

オープンに聞く

選択肢を絞らずにオープンに聞くことで、誘導をしないようにします。

「晴れと雨どっちがすきですか?」
「どういう天候・気温のときにテンションがあがりますか?」

聞くことに徹する

質問を多くしてしまうと、どうしても質問にインタビュアーの価値観が入ってしまいます。

極端に言うともう相づちとか話をうながす程度で、相手の話を聞くことに徹します。

イ:「ご職業は?」
ユ:「デザイナーです」
イ:「じゃあ、絵書くのとか好きなんですか?」

イ:「ご職業は?」
ユ:「デザイナーです」
イ:「あー、デザイナーなんですねー!デザイナーっていうと...?」
ユ:「デザイナーって言ってもUXデザイナーで、ビジュアルはやらないです。イラストレーターとかも使えません」

具体的に、できるだけ事実を聞く

自分を分析させるようなことを聞くのではなく、実際にあったことを聞きます。淡々と事実を述べれば良いので、ユーザーが自分を理解していなくても良いし、何を答えればいいかも明確です。

「何故この勉強会に来たのですか?」
「この勉強会に参加したときのことを詳しく教えて下さい。まずどこで知りましたか?〜〜〜そのとき、お仕事は忙しかったですか?〜〜〜」
「明日晴れだったらなにをしますか?」
「明日、降水確率10%で気温は22℃。朝10時に起きて体調も良くて、〜〜〜、午後13時から数時間は何をしていると思いますか?」(これが例として良いかわかりませんが...)

おわりに

今回はインタビューに絞った話をしました。こんなこと言っておきながら自分がちゃんと全部実践できているわけではないです。ほぼ自分に言い聞かせています。

いくらインタビューがうまくいったからといって、その結果の使い方を誤ってしまうと、意味がありませんけどね。

ユーザーと正しく向き合って、体験を改善をしていきたいものです。

参考